2025.01.24

インタビュー

細長〜い生活道具のお店・蒲田商店

#働くひと

南町通りを西へ抜けてすぐ。 おもちゃのつちだのお向かい辺りに、細長いお店があります。 ここが生活道具を取り揃える蒲田商店。 前店主さんから譲り受けたお店を、現店主さん好みに少しずつリノベーションしてきました。

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山陽百貨店から南町通りを抜け、そのまま駅西に進むと右手にあるのが蒲田商店。お店のお顔はガラス張りになっていて、中の様子がよく見えます。こんなおしゃれな外観で、新築かと思う方もいるかも?でも、蒲田商店の今の店主さん・土田由里さんは3代目!2代目店主さんから、このお店を継承し、時間をかけて今の姿に少しずつリノベーションしていきました。品揃えは由里さん好みも入っているものの、事業継承後も一貫して生活雑貨を扱う「荒物屋さん」です。私が由里さんと出会ったのは大学の講義。そこで私は朝市を知り、え今週末やん!行ってみよう!となり、色々あって運営メンバーにも入り、記事も書き、友達も増えて、こんなことに。

まちゆく由里さん

由里さん、福岡出身でお引越し経験豊富な方です。ドライヤー嫌いで高校時代から維持しているショートカットがトレードマーク。奈良の大学を出て後は、福岡に帰ってアルバイト生活をしていました。アンティーク屋さん、インテリア屋さんなど、由里さんの興味あるものに加えて飲食店も。ご結婚されて大阪に行ってからは、リフォームの営業。お子さんが産まれてからはデザインのお仕事も。2人目の娘さんが産まれたタイミングで、姫路にやってきました。そこから市内でも何度か転居し、なんとここまででお引越し履歴は6回に!

ショートが姫路1似合う!

じっと1つの場所に留まっていられないタイプかと思いきや、そうでもない様子。むしろ、引越し疲れたわ〜!という感じでした。

そんな経緯で姫路にやってきてからは、設計等のお仕事に。ここまでの経歴が一級建築士すぎますね。そう、由里さんは一級建築士です!そして2021年、姫路市主催のリノベーションスクールの存在を知りました。姫路市では、忍町と久保町一帯の駅西エリアでリノベーションまちづくりをしています。空き家や空き地、いわゆる遊休不動産とそこを使いたい人を結び、エリア一帯の魅力アップに繋げるのがリノベーションまちづくり。そこには、学生から駅西でお店を既に持っていらっしゃる方々まで参加されていたそう。ここで駅西のあり方と向き合う中で、蒲田商店の事業継承に漕ぎ着けました。2代目の蒲田商店の店主さんに初めて会ったのもスクール。先代店主さんは2021年の年末まで、2022年の1月からは由里さんに事業継承されました。

さて、お店を継いでからは店舗そのもののリノベーションに本腰が入ります。まずは物置になっていた2階から、次に1階も壁や天井を塗ったり、落ちかけだった電灯も新しく替えたり。地道に塗装をしていく由里さんの奮闘の様子は、お店のインスタグラムで覗けます!

2階はアーティスティックな商品が中心。

この壁も棚も照明も、由里さんのリノベの賜物です。

さて、このリノベーションの中で、お店の前面にガラス張りのドアが付きました。オーニングは新しいものに変更しないなど、お店の顔は大きく変わらなかったものの、ドアがないのは冬寒すぎたようです。

お店のドアのあり方も、まちの様相を作ります。市場のお店にドアがついていないorガラス張りになっていることに倣ってか、ここで新しくできたお店も、全面ガラス張りだったり店主さんが作業しているお顔が外から見えるようになっていたりするところが多いような気がしますね。

大学生、ボスから色々学びました

6回もお引越しされてきた由里さんでも、今までで1番良かったまちはやっぱり姫路!ここに来て価値観が変わったと話しますが、娘さんたちがまちの大人に挨拶できるようになったことが大きいそうです。確かに、普段の朝市の時でも出店者さんのお子さんたちはいつも挨拶してくれるし、きっと校区も学年も違う子どもたちどうしでも、一緒に遊んでいます。由里さんは、娘さんたちに対し「色んな大人と関わってほしい」とお考えだそう。いや〜自分はどうだったかな?小学生のころなんて、親戚にすら挨拶できず、親には内弁慶と言われていたのでこの子たちはえらいなあといつも思っちゃう。

そんな駅西が好きだから、この先も変わらないでいてほしい!だそう。由里さんが今までこのまちのために行動できていたのは、「こうなってほしい」ではなく「こうはなってほしくない」の姿があったから。実は忍町と久保町一帯は、駅近なのに地価が安く、空き地はすぐにマンションや駐車場になってしまいます。マンションが増えると、いつも朝早い市場の生活と噛み合わなくなって今のような「挨拶できる関係性」が難しくなるのでは、との思いが。

そんな背景もあってか、他のお店の方とお話をしていても、朝市参加やここでの開店のきっかけによく由里さんのお名前が登場します。朝市学生ボランティアも、由里さんのことをボスと呼んでいました。1月末で駅西の蒲田商店は休業に入り、山口県の方に移ってしまいますが、今の駅西の姿は由里さんの思いがなければこうにはならなかったのではと思います。蒲田商店のように事業継承とまで行かなくても、廃業された方の次に建物をリノベーションしてお店を構えられる方がいてくださって良かったなぁ。

ストーブ、こういうところが由里さんの好きなとこ。

長門湯本もきっとステキお店

駅西のお店を休業して次は、ご実家に近い山口県の長門湯本でお店を続けられる予定。長門湯本は、姫路と違って小学校も複式学級になるくらいの田舎。まちづくりに熱心なまちで、最近は移住者も増加中だそう。次の店舗も、駅西の店舗と同じようにリノベーション物件とのことです。ここに決まったきっかけは、どうせ住むなら完全に住宅街というところではなく、商売しているまちが好きだからとお話されます。長門湯本はまさに温泉街!みんなそこでお仕事をされて来ているので、まち全体で子育てするよ〜と言ってくれたり。また、1人で切り盛りできる規模で、また通りがかりなどではなく、蒲田商店をめがけて来てくれるお客さんを対象にした方が面白いだろうということで田舎に行きたかったそうです。

夜蒲田で〆

2025年1月30日及び31日、つまり姫路での最終営業日はいつもより少し長めに営業。私も大学で色々と仕事をやっつけてから、31日金曜日の夕方に駆けつけました。由里さんにご挨拶しに行くのももちろんですが、私のお目当てはチャイ!軒先にチャイ屋さん・Hüttea(ヒュッティー)さんが来てました。グリハンでシナモンドーナツを買って、チャイがコトコト煮えるのを由里さんとお話ししながら待っていました。お客さんは次々と。特に、この日はタワシが人気ですぐなくなってしまったそう!チャイも飲み飲みお喋りしていると、お客さんの次は続々と見知った人達が来ました。この近辺の店主さんも、そうでなくても朝市に何かしらの形で関わっている人も。お仕事終わりに、そのまま寄ってこられていました。なんとなく来てみたら色んなお友達を会えるのが駅西の嬉しいところ。この日は、それが特別濃縮されたような場が蒲田商店でできていました。

2025年1月31日、最後の営業日。たくさんの由里さんフレンズが集まりました。

駅西の店舗は2025年の1月いっぱいでここのお店は閉められました。が、由里さんが少しずつリノベーションされたあのお店はそのままに、新しい店主さんが入ります。新しい店主さんの作るお店はどうなるでしょうか。蒲田商店も、お店の構え自体は変わっても、駅西と同じように長門湯本の風景に溶け込むステキなお店作りをされるでしょう。新幹線で行って温泉入って、蒲田商店山口バージョンを見に行くぞー!

この記事を書いた人:どひ

兵庫県立大学4年生(2025年2月現在)。都市計画研究室に所属し、個人的に朝市のお手伝いをしている。縁があり夕雲舎でライターとして駅西にいる人の取材を行なっている。コミュ力おばけ。